Interview with Billy Sheehan (Sep 7, 2001)
(in Japanese)
by Hiroshi
Last Update : Sep 11, 2001
■Niacin
"Time Crunch"製作にあたって、コンセプトやテーマを決めましたか。それとも、Niacin向けの曲は、自然にできてくるものなのですか。
事細かに決めておいたわけではないが、アップテンポでエキサイティングなものにしたかった。外部の人間をあまり入れずに、俺とJohnだけで曲作りを行ったので、パーソナルなアルバムだ。
"Time Crunch"では、曲作りをしながらレコーディングしたのでしょうか。Johnと作曲してから、Dennisとレコーディングしたのでしょうか。
作曲しながら同時進行でレコーディングした。すぐにDennisもきてレコーディングしたので、アルバム製作のプロセスはすごく短かった。即興性が強く、新鮮味のあるアルバムになった。
Niacinのメンバーは、全員がたくさんのレコーディングに参加していて忙しいのですが、Dennisのスケジュールを空けてもらうのも大変ではないですか。
Dennisもとても忙しいね。Dennisは最高のドラマーで、みんなにひっぱりだこだ。確かにスケジュールを空けてもらうのは大変だったけれど、最終的にはうまく調整できた。
King Crimsonをカバーしていますが、TalasのライブでもKing Crimsonのカバーを演奏していますね。
そう、Talasでも演奏している。
最近のKing Crimsonはお聞きになっていますか。
最近のものはそれほど聴けていない。新しい音楽を聞く時間が、あまりないんだ。たまに土曜日の夜に時間が空いたときなんかは、Humble Pieのアルバムや、King Crimsonの"Red"なんかを聴いてしまうことが多い。新しいバンドに良いものがたくさんあることは分かっているけど、すべてをチェックすることは難しい。Tony LevinやAdrian Brewのことは個人的にも知っていて、素晴らしいミュージシャンであることは間違いない。Robert Frippのやることは、すべて尊敬している。6人編成のKing Crimsonも素晴らしいに違いない。
MR. BIGの日本公演に、Robert Frippが見にきたことがあり、楽屋でジャムったそうですね。ステージで競演されたことはありますか。
競演したことはないけど、ライブを見にきてくれた後にコーヒーショップに行って、King Crimsonにまつわるあらゆる話を聞くことができた。とても素晴らしい体験だった。ファースト・アルバムは、どこかのリビングルームで一週間でレコーディングした、なんて話が聞けて、とても楽しいひとときだった。
Jeff Beckと競演されたことはありますか。
Jeff Beckと競演したことはないけど…… 1988年にSteve Stevensのライブに飛び入りした後に、レストランに行ったんだ。俺の友達のウェイトレスが、「Jeff Beckが来ることになったんだけれど、テーブルが空いていないので、ここに呼んでいい?」と訊いてきたんだ。Steveと一緒に「もちろん!」と答えたよ。そのときにいろいろ話をした。ちょうどその頃Mick Jaggerがソロアルバムを出していて、ルックスが良くてドラムのうまい奴はいないかと相談された。俺はTerry Bozzioを推薦した。結局、彼がビデオクリップに出演したんだけれど、あれは俺の推薦だったんだ。
(注) Mick Jaggerのソロアルバム"Primitive Cool"からのビデオクリップ"Throwaway"のことだと思われます。"Primitive Cool"には、Jeff Beckが参加しています。ただし、ビデオ収録は1987年10月20日ですので、1988年というのはBillyの記憶違いかもしれません。
レコーディングで新しい機材を使いましたか。ライブとレコーディングで、ベースを使い分けていますか。
(今弾いているベースを見せて) どちらもこのベースさ。最近はProToolですべて作業をしているので、作業は早くすむし、思いついたことをすぐにできるのが素晴らしい。アーティストが作業するための道具として、とても優れていると思う。後作業もやりやすいしね。もうテープでのレコーディングには戻りたくないね。"Glow"と"Outside Inside Out"では、フレットレスベースを弾いている。ヘッドアンプは、AVALONの737を使っている。
日本でのライブの予定を教えてください。
まだ決まっていないけれど、なるべく早く日程を決めて発表したい。
Dennisが、来日してブルーノートで公演中です。今日は福岡なので無理なのですが、競演したくないですか。
もちろんプレイしたいよ。
Tony MacAlpineも一緒ですよ。
11月から始まるSteve Vaiのヘッドライン・ツアーで一緒になるよ。彼はセカンド・ギタリストだ。
えっ、Tonyが「セカンド」ギタリストなんですか?
今回はMike Keneallyが参加できないので、キーボードも弾けるTonyになったんだ。
今後の活動の中心はNiacinになりますか。
ついこのあいだのごたごたがあったので、今はまだ決めかねている状況だ。10月ぐらいになって落ち着いたら、今後2〜3年の計画を立てようと思っている。
■MR. BIG
あなたのインタビューが、今週発売されたBURRN!に掲載されています。その後「MR. BIGから解雇されたこと」について、状況は変化していますか。
UDOのウェブサイトに、ファイナル・ツアーのことが今日発表になっている。喧嘩別れはしたくないので、最後にお別れツアーを行って、ハッピーな気持ちで解散することにした。俺なしでMR. BIGの存続は不可能ということで、みんなの意見が一致した。来年1月のフェアウェル・ツアーで解散ということに決まった。
Ericは「必ずしもフェアウェルではない」とファンにメールを送っていますが、ファンにショックを与えないためでしょうか。
いや、フェアウェルで決定したんだ。Patが1日プロモーションでの滞在を延ばして、おととい直接話して結論を出した。これで全員が納得している。伊藤政則氏の番組のビデオ収録があったが、俺とPatが言っていることに、なにもくい違いはない。UDOの人も同席していた。事実は解散ということだ。
Paul GilbertのRacer Xが、1/8〜1/12に日本公演を行います。フェアウェル・ツアーならばPaulの参加もあるのでは。
Paulは自分から辞めたから…… それが彼の選択じゃないかな。
G3でPaulと競演されましたが、彼と一緒にプレイすることに「マジック」を感じましたか。
また会えたのは嬉しかったし、ステージで競演できたのも嬉しかったよ。
"Shine"のビデオクリップはごらんになりましたか。あなたは定位置でじっとベースを弾いているだけなので、がっかりしました。
アルバムについては、俺は完成したもの聴く機会が与えられなかった。非常にアンフェアなやり方だと思う。ビデオクリップに関しては、俺はクビになったんだから、クビになった人間がでるのはおかしいはずなので、ビデオを公開しないか、公開する場合は俺の部分をカットするように、弁護士が正式に文書で要求した。彼らはカットすると言ったのにもかかわらず、実際にはカットされないままリリースされてしまった。弁護士が文書で要求したことが守られなかったので、レコード会社は訴えられることになるだろう。ビデオを見たときには、本当に頭にきた。
(注) 今回のプロモーションにずっと同行されていた方によると、BillyはMR. BIGのことに関しては、他の取材でも感情的になることなく、事実を淡々と述べていたそうです。とてもクールに対応していたそうです。
たくさんの素晴らしいアルバムにセッションで参加されていますが、やはり「ロックバンドのメンバー」であり続けたいと思いますか。
ソロアルバムも出したけれど、ロックに限らずバンドでやっていきたい。例えば、MR. BIGが活動を停止していたとき、みんなはソロアルバムをつくったけれど、俺はNiacinというバンドをつくった。俺は、「バンドでやっていきたい」という気持ちが強いんだ。自分一人よりも、誰かと協力して何かを作るのが好きで、Terry BozzioやSteve Vaiとのコラボレートに価値を見いだしている。やっぱりバンドが好きだ。
■Billy Sheehan
"Compression"はとても素晴らしいアルバムです。シングルに収録されたインストルメンタルの"Shadow"がプログレッシブでとても好きなのですが、なぜアルバムに収録しなかったのでしょうか。
"Compression"は完全なボーカルアルバムとして完成させたかったので、インストルメンタルは除外した。前からアナウンスしているペアとなるインストもののベースアルバムには、プログレッシブでワイルドなプレイが入っているよ。
他にアルバム未収録の曲はあるのでしょうか。
すべて完成させたわけではないけれど、ソロアルバム用には60曲ぐらい用意した。
あなたの歌やギターも素晴らしいことは、ソロアルバムで証明できたと思います。すべてのパートを演奏するソロアルバムを、今後も創り続けたいですか。
ベースソロのアルバムを創った後で、"Compression"の方向性のアルバムも創っていきたい。ドラムは自分で叩いたりプログラミングしたりすると思うけど、歌もギターも、もちろんベースを自分で弾きたい。
"Compression"では、ご自身でドラムを叩かれたのですか。
自分で実際に叩いたものでループを作った。Steve Jordanモデルの、YAMAHAのカクテル・ドラム・キットを使った。
G3でのライブの写真を送っていただき、ありがとうございました。G3では、思う存分プレイできましたか。
最後の曲でSteve Vaiと掛け合いをやったり、思う存分暴れることができたよ。
G3で来日の予定はないのでしょうか。
まだそういう話は聞いていないな。
G3で新たに知り合ったミュージシャンに刺激を受けましたか。Virgil Donatiとのコンビネーションは良いものでしたか。
Virgil Donatiは、メチャクチャすごいドラマーだった。John Petrucciは、Mike PortnoyとDream Theaterでやっているのは知っていたが、改めてすごいと思った。飛び入りしてくれたStuart HammやDave Larueも、素晴らしいプレーヤーだった。Joe Satrianiは、今までライブで見たことがなかったのだけれど、今回ライブを見ることができて素晴らしかった。一番良かったことは、久しぶりにアメリカのあちこちでライブで演奏できたことだ。
もしSteve Vai、Gregg Bisonetteと再びバンドを組むことがあるのならば、Sammy Hagarをボーカルとして迎えてはいかがでしょうか。
それには同意できないな。(笑) Sammy Hagarに関しては、Montroseのファースト・アルバムは素晴らしかったけれど、それ以降、俺が気に入るような歌はなかった。残念だけれど、Sammy Hagarは合わないんじゃないかな。
Terry Bozzioとのアルバムのリリースはいつ頃でしょうか。
完成までに、あと1ヶ月ぐらいかかると思うので、リリースは来年になると思う。
フレンチポップスのMylene Farmerのアルバム"Innamoramento"に参加されていますが、どのような経緯で参加されたのでしょうか。
LAにいる俺の友達が、そのアルバムをプロデュースしていたんだ。
どの曲に参加されているのでしょうか。
1曲か2曲に参加している。3曲かな? あまりよく覚えていないよ。(笑)
Talasでの活動は、あなたにとって「気軽に楽しめる」ようなものでしょうか。
そうだね。Talasは、一緒に飲んで、一緒に歌って、楽しむバンドだ、今でもその状態を保っているよ。
某アルバムに匿名で参加されているようですが、匿名としている理由を教えてください。
(顔をしかめて) そのアルバムのことは、ウェブサイトに掲載済みなのかな?
いえ、掲載していません。
それはよかった。最初に某有名ベーシストと某有名ドラマーが参加していると聞いて呼ばれたんだけれど、テープを聞いたら酷い出来だった。スタジオでやる気も失せちゃって、なんとか理由をつけて早いとこ帰りたいと思わせるような音楽だった。とりあえず1曲やったんだけれど、すべての音がかみあっていない、なんだかよく分からない曲だった。「もう1曲」と求められたけれど、「時間がない」とか理由をつけて帰ってしまった。Atlanticに電話して説明したら、クレジットしてはいけないと言われたので、匿名にしたんだ。LAでは割とそういうことがあるんだ。金をばらまいて、誰か一人に渡りをつける。例えば、そうして某有名ベーシストに参加してもらう。次に某有名ギタリストに電話して、某有名ベーシストが参加するなら良いだろうと思わせる。次に、某有名ベーシストと某有名ギタリストが参加すると電話する…… そんなことがあるんだ。
なぜあなたがこんなアルバムに参加しているんだ、と思っていました。
俺自身、なぜ参加したんだ? と思うよ。(笑)
インドネシアのバンド、Gigiのアルバムにも参加されていますね。
Gigiは良いバンドだね。Gigiでのプレイのようなレアな音源は、近々俺のオフィシャルサイト(http://www.billysheehan.com/)に掲載する予定だ。でも、某アルバムでのプレイは掲載しないよ。(笑)
ツアー中、ペットの猫の世話は、誰がしているのでしょうか。
アシスタントが世話をしてくれている。
あなたはすべてのジャンルのベーシストから尊敬される存在ですが、あなたに似たスタイルのベーシストはいないと思います。頻繁にベースクリニックを開催したりしているのに、どうしてあなたのスタイルは真似しきれないのでしょうか。
俺のスタイルは、30年以上ベースを弾いて培ってきたもので、特別なものだと思う。指紋とか網膜のように、みんなそれぞれ違うんだ。良い悪いというものではなくて、人間というものは一人一人まったく違うものだからね。この世の中には、雪の結晶のように同じものは何一つない、という哲学がある。どんな物体であっても、どんな粒子であっても。原子のレベルでみても、電子の軌道は必ず違っている。そういうレベルでみても、同じものは何一つない。ちょっと大げさになったけれど、そういう理由で俺と同じようなベースプレーヤーはいないんじゃないかな。
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